『夜は短し 歩けよ乙女』〜不思議恋愛小説
2008年07月04日 (金) | 編集 |
 

私は太平洋の海水がラムであればよいのにと思うぐらいラムを愛しております。
 もちろんラム酒をそのまま一壜、朝の牛乳を飲むように腰に手をあてて飲み干してもよいのですが、そういうささやかな夢は心の宝石箱へしまっておくのが慎みというもの。美しく調和のある人生とは、そうした何気ない慎ましさを抜かしては成り立たぬものであろうと思われます。


夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
(2006/11/29)
森見 登美彦

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なんとも不思議な小説です。
京都の大学生である「私」と、「私」が恋した同じ大学のサークルの後輩である「彼女」の一人称で交互に綴られる京都ミステリーツアーといったところでしょうか(笑)。
天然と呼ぶのもはばかられる天衣無縫な「彼女」のゆくところ、理不尽の嵐が吹き荒れ、京都はまさに百鬼夜行。
3階建て電車で街を闊歩するお大臣やら空に浮く浴衣姿の男やら、半分ファンタジーです。
そういう意味で「鴨川ホルモー」とすごく似てます。
あれも舞台が京都で、主人公学生の恋愛モノで、でもなぜか物語はファンタジーだった(笑)。
ただ、私としてはこちらの方が好みです。
なんだか妙ちくりんな文章だし、話なんですが、なんか可愛い。
「わりと面白かったし、他の本も読んでみようかなあ」と思わせる素直さがあります。(ホルモーの方は、「それなり面白かったけど、次はいいや」という感じ)
あとこれ漫画化もされてるんですね。たしかにこれは漫画向きの題材かも。

夜は短し歩けよ乙女 第1集 (1) (角川コミックス・エース 162-2)夜は短し歩けよ乙女 第1集 (1) (角川コミックス・エース 162-2)
(2008/03/26)
森見 登美彦

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 『名もなき毒』〜病んでいく社会
2008年05月14日 (水) | 編集 |

「『普通』というのは、今のこの世の中では『生きにくく、他を生かしにくい』と同義語なんです。『何もない』という意味でもある。つまらなくて退屈で、空虚だということです」
 だから怒るんですよ、と呟いた。
「どこかの誰かさんが、『自己実現』なんて厄介な言葉を考え出したばっかりにね」


名もなき毒名もなき毒
(2006/08)
宮部 みゆき

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大企業の会長の娘婿にしてそのグループ企業の広報を作成する部署に勤める杉村さんが主人公のミステリ、再びです。
今回はタイトル通り『毒』がテーマ。
シックハウスや土壌汚染なども出てきますが、やっぱり一番問題なのは人の心に積もる毒、なのでしょうね。
コンビニの紙パックジュースに青酸カリを仕込む無差別殺人の被害者と偶然知り合った杉村ですが、一方、一時期バイトで雇っていた女性のせいでトラブルに巻き込まれてもいます。
彼女の過去を調査したという元警察官・北見氏は、その異常な行動を取る女性をも『普通』だと言いました。
最初読んだときは、「そういう行為に走ってしまう要素は誰にでもある」という意味かと思いましたが違ったようです。
つまり自分が一番大切であり、そのためなら他者を傷つけ貶めることを躊躇しない人々が大半になる、という『普通』です。
でももしかしたらそうなのかもしれないと思いました。
世間的に信用のある会社などに勤めていると、周りにいるのは常識人ばかりですから気付きにくいんですが、警察はもちろん、学校、病院など、色んな階層の人々が集まるところではもう話題になっているじゃありませんか。
『モンスター・○○』と呼ばれる人々のことです。
彼らの吐き出す毒が社会を汚染していく―――ニュースなど見ているとそう感じます。

しかして本の方はというと。
……うーん、前作に比べるといまひとつでしょうか。
こう、ディテールは驚くほど細かく描写されていて美しいけれど、全体として眺めたとき何か散漫な印象になってしまう絵のようです。
宮部みゆきにしては、という注釈がつきますが。
私は前作『誰か』の方をオススメします。

誰か (文春文庫 み 17-6)誰か (文春文庫 み 17-6)
(2007/12/06)
宮部 みゆき

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 『鴨川ホルモー』〜嗚呼、京都
2008年03月25日 (火) | 編集 |
鴨川ホルモー鴨川ホルモー
(2006/04)
万城目 学

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『鹿男』とやらがドラマ化された作家のデビュー作。
予想以上に面白くさくさくと読めました。
これは……青春物、でいいんだろうか。
一言で言うと、京都大学に入学した主人公が一目惚れした女性のために怪しいサークルに入ってしまう話です。
そのサークルに入ったばかりに『ホルモー』なるものをするハメになった主人公。
『ホルモー』の正体はぜひ自分で確かめてください。てゆか説明するとネタバレになるというか……微妙にファンタジー要素が(笑)。
でも作品自体は決してファンタジーじゃなく、しいて言うならやっぱり青春物とか娯楽小説という奴なんでしょうねえ。
とりあえず無性に京都行きたくなりました。

鹿男あをによし鹿男あをによし
(2007/04)
万城目 学

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 『舞姫』〜新成人よ、こんな男と女にはなるな
2008年01月14日 (月) | 編集 |

相澤謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我が脳裡に一点の彼を憎む心今日までも残れりけり。

阿部一族・舞姫    新潮文庫阿部一族・舞姫 新潮文庫
(1968/04)
森 鴎外

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成人の日の今日、テレビの世界名作あらすじかなんかでやっていたのですが、一番肝心のこの文章が出てこなかったので。
高校を出た人ならほぼ確実に教科書で読んだであろう『舞姫』。
そして女性ならほぼ100%「最低の男だな豊太郎ー!!」と叫んだに違いない『舞姫』(笑)。
こんなもん教科書に載せていいのかと真剣に怒ったものです。若かったあの頃(笑)。
いや今でも豊太郎は最低の男だと思ってますが。
何が最低ってやっぱりこのラストの文章ですよ。
相澤は実際、外国で舞姫なぞと結婚してエリートコース棒に振る気かと豊太郎のことを心配してくれたわけです。
価値観は違いますが、彼なりの価値観でもって最大限の対処をしてくれたわけで。
一番悪いのはぐだぐだ優柔不断にエリスと付き合って妊娠させて、挙句気がふれた彼女を置いて日本へ帰っちまった豊太郎に決まっています。
しかもそれをこうやって「友人」と言いつつ恨んでいるあたりが最高に男らしくない。

前にテレビでフィリピンあたりで日本のビジネスマンに結婚するからと言われ信じていたのに捨てられて子供を育てている女性達が紹介されてるのを見たんですが、つまり日本の男って昔から全然変わってないんですね。
というかそれってむしろこの小説のせいじゃないの!? などとまで思ってしまいます。
鴎外もこんなところで終わらせないで、豊太郎はその後気が違ったエリスが追いかけてきて全部上司にバレてクビになり、エリスの介護をしながら苦労して子育てして、でも成長した息子(仮定)は「お袋がこんなふうになったのは親父のせいだ!」とグレて家庭内暴力に走り、疲れ果てた豊太郎はエリスと無理心中、くらいの悲惨な結末にすれば少しは読んだ男だって震え上がったかもしれないのにー。
などと考えてしまったのでした。

とりあえず新成人の皆さんは、女性はこんな男に引っかからず、男性はこんな男にならぬよう気をつけて欲しいものです(笑)。
でも今年も沖縄あたりの荒れた成人式放映してましたが、あれを見るともう手遅れなのも大分いるなーと思いました……。
 舞城についていけなくなりつつある
2007年04月08日 (日) | 編集 |

 僕は一体どうしてしまったんだろう?
 鬣があったときには自分が獣みたいに思えて人間らしくありたいと願っていたのに、実際に背中がツルツルになってみたら、機会があるたびに人を殺してよっぽど獣らしくなっている。失った僕の鬣には何があったんだろう?


山ん中の獅見朋成雄
舞城 王太郎
4062756838

えーと……。
何かもうわけわからなくなりすぎの作品。
主人公のの獅見朋成雄は中学生ですごく足が速くてオリンピックに出ないかと言われるんですが、背中から首にかけて生えた鬣のような毛が恥ずかしくて山の中で書道の修行を始めてしまいます。
それも謎ですが書道の先生が山の中で死にかけて、疑われた獅見朋成雄は証人(?)の馬を求めて山中を走るうちに謎の村を見つけてしまい、そこで「人盆」なる女体に人の肉を載せて食べることを『究極の美味』と考える人々と暮らすようになってやたら人を殺したり、女体の背中を整える役についたりします。
……何かもうとんでもない世界です。
まあ舞城だから……しかし一人称でいつまでも続く文章にもあるんだかないんだかわからないストーリーにも疲れてしまいましたよ私は。
もうこういう文章についていけないトシなのかもしれない……。

<4月7日読了本>
オイレンシュピーゲル 1 (1)
冲方 丁
4044729018
『マルドゥック』シリーズの冲方丁の新刊ということで買ってみましたが……これまた文章がわけわからないことに……。
そして機械化された少女たちが戦うという内容はちょっと『ガンスリンガーガール』に似てるなあ。

GUNSLINGER GIRL 5 (5)
相田 裕
4840230722