2008年05月14日 (水) | 編集 |
「『普通』というのは、今のこの世の中では『生きにくく、他を生かしにくい』と同義語なんです。『何もない』という意味でもある。つまらなくて退屈で、空虚だということです」
だから怒るんですよ、と呟いた。
「どこかの誰かさんが、『自己実現』なんて厄介な言葉を考え出したばっかりにね」
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大企業の会長の娘婿にしてそのグループ企業の広報を作成する部署に勤める杉村さんが主人公のミステリ、再びです。
今回はタイトル通り『毒』がテーマ。
シックハウスや土壌汚染なども出てきますが、やっぱり一番問題なのは人の心に積もる毒、なのでしょうね。
コンビニの紙パックジュースに青酸カリを仕込む無差別殺人の被害者と偶然知り合った杉村ですが、一方、一時期バイトで雇っていた女性のせいでトラブルに巻き込まれてもいます。
彼女の過去を調査したという元警察官・北見氏は、その異常な行動を取る女性をも『普通』だと言いました。
最初読んだときは、「そういう行為に走ってしまう要素は誰にでもある」という意味かと思いましたが違ったようです。
つまり自分が一番大切であり、そのためなら他者を傷つけ貶めることを躊躇しない人々が大半になる、という『普通』です。
でももしかしたらそうなのかもしれないと思いました。
世間的に信用のある会社などに勤めていると、周りにいるのは常識人ばかりですから気付きにくいんですが、警察はもちろん、学校、病院など、色んな階層の人々が集まるところではもう話題になっているじゃありませんか。
『モンスター・○○』と呼ばれる人々のことです。
彼らの吐き出す毒が社会を汚染していく―――ニュースなど見ているとそう感じます。
しかして本の方はというと。
……うーん、前作に比べるといまひとつでしょうか。
こう、ディテールは驚くほど細かく描写されていて美しいけれど、全体として眺めたとき何か散漫な印象になってしまう絵のようです。
宮部みゆきにしては、という注釈がつきますが。
私は前作『誰か』の方をオススメします。
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