『ウォッチメイカー』〜このミス1位ではあるものの
2008年06月06日 (金) | 編集 |

「ふと思ったんです。人生は思いもよらなかった場所に人を連れて行くものだなって」


ウォッチメイカーウォッチメイカー
(2007/10)
ジェフリー・ディーヴァー

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『ボーン・コレクターズ』の探偵リンカーン・ライムシリーズ最新作。
昨年の「このミス海外編」第1位を取ったということでワクワクしながら読みました。
2つの殺人事件現場に置時計を残した残虐な犯人『ウォッチメイカー』を追うライムたち。
今回は尋問の専門家の女性も登場したり、色々転機もあります。
が、肝心の犯人であるウォッチメイカーはなぜだか最初の2件以降失敗してばかり。
ライムが優秀で済ますにはなんだかなあ、と思っていたらば、実は犯人の真の目的は……と、いう展開で、そのうえその真の目的を達成させたと犯人に思わせる、などどこかで見た展開。
というか、前の『魔術師』と同じパターンじゃないの??
なんかガッカリです。
ウォッチメイカーにはもう少し鮮やかな事件を期待してたのですが。
人間ドラマとしては読み応え十分なんですけどね。
ああ、なんだか今こういう科学捜査じゃなく、論理だけで犯人を追い詰める本格推理が無性に読みたいです……。
 『ジェネラル・ルージュの凱旋』〜ちょっと医療モノ続き
2008年05月28日 (水) | 編集 |

「医者には古いも新しいもない。みな、自分の姿勢で誠意を尽くして患者に相対しているだけだ」


ジェネラル・ルージュの凱旋ジェネラル・ルージュの凱旋
(2007/04/07)
海堂 尊

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『チーム・バチスタの栄光』シリーズ、一作飛ばして3作目です。
表紙は黄色、青と来て今度はタイトルにあわせて赤。
舞台はバチスタと同じ桜宮市の東城大学医学部付属病院病院で、主人公も愚痴外来の田口先生。
と、言いたいところですが今回主役はどう見ても『ジェネラル・ルージュ』こと救急医療チームの速水部長でしょう(笑)。
田口が委員長を務めるリスク・マネジメント委員会に、速水部長の収賄を告発する文書が届き、それを調査するというストーリーで、バチスタに登場した白鳥も出てきます。
が、やはり今回はほぼジェネラルの独壇場。
さっそうと血染めの白衣をひるがえし、重傷患者が押し寄せる戦場と化した病棟でルージュを引いて指揮をとる『血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ)』がとにかくかっこよすぎ(つけすぎ?)というか、映画俳優みたいです(笑)。
そのあたりはちとうさんくさいほどなのですが、扱われている医療現場の経営問題は深刻。
先日『貧困大国アメリカ』を読んだばかりなので特に興味深かったり。
いまや救急医療・産婦人科・小児科は病院の金食い虫ですか……。
この問題は今後現実でも注視していかなければなと思います。
しかしラスト、表紙からしてもジェネラルがヘリ乗って飛んでくるのかと思っていたのでちょっと物足らない気がしちゃいました(笑)。

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)
(2007/11/10)
海堂 尊

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 『ルポ貧困大国アメリカ』〜民営化という罠
2008年05月17日 (土) | 編集 |

「民主主義の国において、市場原理を絶対に入れてはいけない場所、国が国民を守らなければならない場所は確かに存在するのです」


ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
(2008/01)
堤 未果

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ネットで話題の本だったので手にとってみました。
ある意味、日本経済はアメリカのあとを追っているといえるのですから、非常に気になるタイトルです。
アメリカの大統領選挙などを通して最近よく知られるようになったのが、まず医療問題。
日本のような国民保険制度がないアメリカでは一度の病気で貧困に追い込まれるという―――NYなんか盲腸で1日入院しただけで243万円取られるっていうんですよ!?
それは確かに怖くて病院にかかれないですよ。
他にもハリケーンに襲われたルイジアナ州では救援が送れて多くの人々が死に、未だに復興は進みません。
貧しい移民たちは市民権を得るため、学生達は学資ローンを払うため、軍に入隊します。
話題のサブプライムローンもまたしかり。
弱者を食い物にする『貧困ビジネス』という嫌な言葉がいまや蔓延しているのです。
その発端は確かに、アメリカと言う国の国家戦略の転換にあったのでしょう。すなわち。

「われわれ政府の仕事とは、国民にサービスを提供することではなく、効率よく金が回るようなシステムを作り上げることだ」



恐ろしい言葉です。政府が国民のいのち、教育、人間らしく生きる権利よりも金儲けを優先させるとは。
そして今、日本でもワーキングプア、ネットカフェ難民、医療崩壊など様々な問題が持ち上がってきています。
後期高齢者医療制度については、確かに高齢化が進み医療費が財政を圧迫しているという問題もあるので闇雲に撤廃を訴えることは出来ませんが、日本政府はアメリカの姿を己が鏡として考え直す必要があるでしょう。
 『名もなき毒』〜病んでいく社会
2008年05月14日 (水) | 編集 |

「『普通』というのは、今のこの世の中では『生きにくく、他を生かしにくい』と同義語なんです。『何もない』という意味でもある。つまらなくて退屈で、空虚だということです」
 だから怒るんですよ、と呟いた。
「どこかの誰かさんが、『自己実現』なんて厄介な言葉を考え出したばっかりにね」


名もなき毒名もなき毒
(2006/08)
宮部 みゆき

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大企業の会長の娘婿にしてそのグループ企業の広報を作成する部署に勤める杉村さんが主人公のミステリ、再びです。
今回はタイトル通り『毒』がテーマ。
シックハウスや土壌汚染なども出てきますが、やっぱり一番問題なのは人の心に積もる毒、なのでしょうね。
コンビニの紙パックジュースに青酸カリを仕込む無差別殺人の被害者と偶然知り合った杉村ですが、一方、一時期バイトで雇っていた女性のせいでトラブルに巻き込まれてもいます。
彼女の過去を調査したという元警察官・北見氏は、その異常な行動を取る女性をも『普通』だと言いました。
最初読んだときは、「そういう行為に走ってしまう要素は誰にでもある」という意味かと思いましたが違ったようです。
つまり自分が一番大切であり、そのためなら他者を傷つけ貶めることを躊躇しない人々が大半になる、という『普通』です。
でももしかしたらそうなのかもしれないと思いました。
世間的に信用のある会社などに勤めていると、周りにいるのは常識人ばかりですから気付きにくいんですが、警察はもちろん、学校、病院など、色んな階層の人々が集まるところではもう話題になっているじゃありませんか。
『モンスター・○○』と呼ばれる人々のことです。
彼らの吐き出す毒が社会を汚染していく―――ニュースなど見ているとそう感じます。

しかして本の方はというと。
……うーん、前作に比べるといまひとつでしょうか。
こう、ディテールは驚くほど細かく描写されていて美しいけれど、全体として眺めたとき何か散漫な印象になってしまう絵のようです。
宮部みゆきにしては、という注釈がつきますが。
私は前作『誰か』の方をオススメします。

誰か (文春文庫 み 17-6)誰か (文春文庫 み 17-6)
(2007/12/06)
宮部 みゆき

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 『彩雲国物語 黎明に琥珀はきらめく』〜新章スタート
2008年05月06日 (火) | 編集 |

「……でも、も、もっと、早くから、頑張ってればよかった」
「そう思ったことのない人間のほーが少ないわよ。最後まで頑張らないままよりはいーじゃないの」


彩雲国物語  黎明に琥珀はきらめく (角川ビーンズ文庫 46-16)彩雲国物語 黎明に琥珀はきらめく (角川ビーンズ文庫 46-16)
(2008/05/01)
雪乃 紗衣

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大人気シリーズ最新刊。ちょっと前回から間が空いたような気がしますが、新章・紅家編スタートです。
正直、話はあんまり進んでませんが……。
いよいよ新王追い落とし派の工作が活発になってきてますね。
でも次の王を狙っていたのがイラスト見たら意外とお爺ちゃんだったのでちょっとガッカリとゆーか、もしもっと有能な王様に交替してもすぐポックリいかれたら結局同じじゃん、などと思ってしまいました。
新米王様だって頑張ってるんですが、ちょっと遅かったということなんでしょうか。
と、↑の台詞のごとく当の王様がしょんぼりしたら妃候補の十三姫がさらりと。
そう、そのとおりですよ。頑張れ劉輝!
ていうか、劉輝には十三姫の方がお似合いなのでは、と思ってしまいました。
このたびヒロイン・秀麗がお妃になれない理由も明らかになりましたし(あーやっぱそれなんだ)。

「……余は……何もかも間違ってしまった気がする……」
「気のせいよ。疲れてんのね。夜ってムダに絶望的になんのよ。明日になれば元気になるわ」


こういうこと言えちゃう十三姫が大好きです(笑)。
てゆーか私にも言って欲しい……(明日からまた会社かああ(涙))。